どーもzildenです。時間があったので以前書店で一目見て買った 著中町 信『模倣の殺意』 を読みました。
本格的なミステリーのため、なるべくネタバレをなくして純粋な感想を書いていこうと思います。
まず読み終わった率直な感想ですが、まずはありがちなトリックが使われているなということでした。ミステリーをそこまで多く読んでいませんが、結末を考える中で予想した1つが的中できたというところです。しかしこの小説で最も驚くべき点は本編ではありませんでした。それは…
この『模倣の殺意』の原案は 1972 年に書かれているというところです。それを踏まえて考えると、いわゆる叙述トリックの先駆け、先駆者といえる作品であり当時で考えればいかに先鋭的な作品だったということが想像されます。40年以上も前の作品が、文学についても研究が進んでいる現代においても大々的に発売されていることに少し感慨深い気持ちになります。
では、可能な限り本編の謎を書かないままレビューしていきたいと思います。
文章の進め方
新人作家坂井正夫が毒により死亡することから物語が進んでいきますが、進行は①中田秋子 ②津久見伸助という二人の視点から進んでいきます。それぞれ事件に対するアプローチが異なります。
①中田秋子
彼女は坂井正夫の実質的な恋人関係にあり、とある出版社の編集者でもあります。彼女は事件に対して坂井正夫のプライベートな人間関係からアプローチをしていくことになります。読んでいくと体感的にこちらの記述のほうが中盤まで比重が大きく、読んでいても 時間 というキーワードに対し読者も一緒になって推理していくことが出来るので、とても面白いです。
②津久見伸助
こちらはルポライターであり、坂井正夫の顔見知りでもあります。彼は事件に対し、坂井正夫が書いた盗作疑惑があがっている作品にまつわる周囲の人々からアプローチを仕掛けていくことになります。実際に彼の視点から不意に上がった何気ない一言から結末を予測することが出来たといっても過言ではなく、事件の全容を暴くためには重要な手がかりが彼の視点には隠されています。
見どころ
この小説は2つの視点から進められていきますが、全編もプロローグとエピローグを含めずに4部に分かれてます。そしてこの4部が見事に起承転結されています。その中で第4部 真相に入る前に
あなたは、このあと待ち受ける意外な結末の予想がつきますか。
ここで一度、本を閉じて、結末を予想してみてください。
という文が書いてあります。書き手が意外と言えるほど自信があるトリックだということがわかります。これは著者からの明確な挑戦状であり、読者としてはテンションがあがりますね(笑) 実際にトリックは面白く、上述したとおり時代の先鋭であるため自信があることも納得できます。著者と読者の戦いが40年以上たっても行われいることが本当の面白いところなのかもしれません。
はい、ということでネタバレをせずに書いていきました。読む価値はあると思うし、日本の叙述トリックを切り開いていった小説としては本編の面白さ以上の価値を持っているのではないかと思います。皆さんもぜひ本屋で見かけたり、通販サイトで興味があれば買ってみてください。
……ネタバレ抜きで感想を書くのは、ミステリーを予測するよりも難しい……
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